弁護士の櫻田です。

 

報道によると、

 

徳島地裁は29日、徳島市観光協会の破産手続き開始を決定した。徳島市の阿波踊りに4億円余りの累積赤字が生じている問題を巡り、市が債権者として、主催者の一つである協会の破産を申し立てていた。(3/29付け徳島新聞)。


徳島市の阿波踊りに4億円余りの累積赤字が生じた問題で、市観光協会は16日、徳島地裁の破産手続き開始決定を不服とし、高松高裁に即時抗告した。(4/16付け徳島新聞)

 

とのことです。

 

上記報道のとおり、阿波踊り事業を巡っては、徳島市観光協会には多額の累積赤字が生じていたようで、徳島市が債権者として協会の破産申立てをして、破産手続開始決定が出されていましたが、協会はこれに不服として即時抗告をしたようです。

 

阿波踊り事業に関する背景はさておき、この徳島市観光協会の破産手続は、上記のとおり、破産をする債務者(協会)ではなく、債権者(市)が申し立てたものです。

債権者が債務者の破産申立てをすることについて、少し意外に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

破産法では、債権者も破産手続を申し立てることができる旨の規定があります(破産法181項)。債務者自身ではなく、債権者が債務者の破産申立てをすることを「債権者破産申立て」といいます(そのままのネーミングですね)。

 

債権者が破産申立てをするメリットとしては、一般的には、債権回収にあるといえます。

破産をすると、債務者の財産は処分・換価され、その金銭は、破産管財人の報酬などを差し引いた上で、債権者に配当されることになります。

しかし、既に支払不能又は債務超過に陥っていることから、処分・換価する財産がなく、配当がなされないこともあります。とすると、債権者としては、訴訟等をして債務名義を取って、個別に強制執行をすることも検討しますが、債務者の財産内容を把握できないことも多く、強制執行が上手くいかないこともまた多いです。そうであれば、裁判所や破産管財人により、債務者の財産を徹底的に調査してもらった方が、強制執行よりも回収する可能性が高いケースもあり得るのです。

このように、債権回収の効率を上げることが債権者破産申立ての目的といえます。

 

また、仮に債権の回収を図れなくても、債務者が破産をすると債権回収が不能となり、その債権について欠損処理をすることができ、税務上利益になる場合もあります。

 

他方で、債権者破産申立てには、高いハードル(デメリット)もあります。

 

まず、申立てをする債権者の方で破産手続開始の原因(支払不能や債務超過の事実)を疎明しなければならず、こうしたことを調査するのは困難を伴います。

 

また、申立てにあたっては、債権者の方で裁判所に予納金を納める必要があります。予納金額は事案によって異なりますが、債務者が規模の大きい会社などの場合には、数百万円かそれ以上になる場合も多いと思います。

 

あとは、通常の債務者申立てによる破産手続よりも時間・手間がかかるでしょう。債務者による抵抗があること多く、手続が長期化することは珍しくありません。

実際、徳島市観光協会の案件も、破産手続開始決定に対して即時抗告(不服申立て)がなされており、これに対する高裁の判断がなされることになりますが、この辺は序の口でしょう。すぐには終わらないと思います。

 

事業の背景などに関心が寄せられていますが、弁護士としては、破産手続の面からも、今後の推移を見ていきたいと思います。